最高裁判所第二小法廷 昭和31年(あ)236号 判決 1958年5月30日
主文
本件上告を棄却する。
理由
被告人二宮憲哉の弁護人長崎祐三の上告趣意について。
論旨第一は、本件に適用されている刑法第一五六条は憲法第一四条に違反すると主張するが、刑法第一五六条は信用度の高い公文書の無形偽造を、私文書と異って特に処罰することにしたものであって、その保護法益は公文書の信用性に存し、行為者が公務員であるか否かによってその保護に軽重を設けた規定ではない。従って所論違憲の主張は、その前提において失当であり(なお、憲法第一四条の趣旨については、当裁判所昭和二五年(あ)第二九二号同年一〇月一一日大法廷判決集四巻一〇号二〇三七頁以下参照)、上告適法の理由とならない。
論旨第二は、憲法第三七条違反をいう点もあるが、論旨のいうような主張が上告理由として許されないものであることは既に当裁判所の判例とするところである(昭和二三年(れ)第一〇七一号同年一二月二二日大法廷判決集二巻一四号一八五三頁)。所論違憲の主張は採用できない。その余の論旨は事実誤認、法令違反及び量刑不当の主張であって、上告適法の理由に当らない。
被告人柳敏夫の弁護人鶴和夫の上告趣意は量刑不当の主張を出でないものであって、上告適法の理由に当らない。
また記録を調べても刑訴四一一条を適用すべきものとは認められない。
よって同四〇八条により裁判官全員一致の意見で主文のとおり判決する。
(裁判長裁判官 藤田八郎 裁判官 河村大助 裁判官 奥野健一)